こんにちは、カラダ・ラボ オレンジです。
セラピストの皆さんは、問診の際患者さんに服用されている薬の種類を効くと思いますが、正直「トラムセット」「リリカ」「サインバルタ」などと痛みに対する薬の種類をいわれてピンと来ない方は多いのではないでしょうか?
そこで、今回はセラピスト向けに痛みの種類と薬の徹底解説をしていきます。
私は鍼灸師でありながら整形外科に勤務しているため、薬品会社の方が定期的に勉強会を院内でしてくださり、詳しい痛みに対する薬の説明を医師とともに受けています。
そこで得た知識と【よくわかる 痛み・鎮痛の基本としくみ】という本を参考にこの記事を書いていきます。
参考文献
痛みの原因は大きく分けて3つの種類があります
はじめに、痛みの原因について解説していきます。
痛みの原因は大きく分けると、【侵害受容性疼痛】【神経障害性疼痛】【心因性疼痛】の3つです。
侵害受容性疼痛
組織の損傷や炎症に伴い発現した物質によって起こる痛みは侵害受容性疼痛といいます。
何らかの原因で組織に損傷や炎症が起こると、組織を修復するためにブラジキニン、プロスタグランジン、サブスタンスP、セロトニン、ヒスタミンなどの発痛物質が放出され、侵害受容器が刺激することにより痛みを起こします。
侵害受容器を刺激するのは指を切るなどの機械的刺激だけでなく、熱いものや冷たいものに触れたときに感じる温冷刺激や辛い物を食べたときに痛いと感じる化学刺激もあるのです。
侵害受容性疼痛には、外傷、打撲、筋筋膜炎、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、変形性関節症、関節リウマチ、脊椎圧迫骨折などがあります。
神経障害性疼痛
神経の損傷または機能異常など、神経に関連して起こる痛みを神経障害性疼痛といいます。
何らかの原因により神経が損傷すると異所性発火やエファプスが起こり痛みを起こします。
また損傷された神経が修復される過程においても交感神経の受容体出現により痛みが起きてしまうのです。
神経障害性疼痛には、帯状疱疹後神経痛、糖尿病神経障害に伴う痛み・しびれ、三叉神経痛、坐骨神経痛、頚椎症神経根症などがあります。
メモ
異所性発火:本来神経の興奮が起こらないところで起こる痛み
エファプス:神経同士が混線し他の神経に興奮を伝えてしまうことで起こる痛み
心因性疼痛
侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に当てはまらない疼痛は心因性疼痛に分類されます。
いろいろな検査をしても組織の損傷がなく、それでも痛みを起こしている場合は心因性疼痛に分類されることが多いです。
心因性疼痛は患者さんの精神が弱いからとココロの問題にされがちですが、近年は脳(認知機能)に問題があると考えられています。
セラピストが知っておきたい【原因別】痛みに対する薬の種類
侵害受容性疼痛に対する薬の種類
侵害受容性疼痛は、組織の損傷・炎症により痛みが起こっているため、抗炎症薬が処方されます。
抗炎症薬の代表は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)です。
NSAIDsは発痛物質であるプロスタグランジンの産生に関与するCOXという物質の働きを阻害し鎮痛が起こります。
しかし、COXは胃粘膜を保護するCOX1と炎症時の痛みに関与するCOX2があます。
そのためCOX1とCOX2の両方に作用するNSAIDsでは胃腸障害が高頻度で起こります。
なのでNSAIDsを処方するときは胃粘膜を保護する薬が一緒に投与されたり、COX2にだけ作用する薬が選択されることが多いです。
ちなみにNSAIDsと同じようにCOXに作用するが、抗炎症作用非常に弱いアセトアミノフェン(商品名:カロナール)もよく処方されます。
メモ
NSAIDs
商品名:ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム)、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)、セレコックス(セレコキシブ)
神経障害性疼痛に対する薬の種類
神経障害性疼痛は、痛みを伝える物質(神経伝達物質)が過剰に放出されることによって痛みが起こるため、抗けいれん薬が処方され神経伝達物質の過剰放出を抑えます。
メモ
Ca2+チャネル α2δリガンド
商品名:リリカ(プレガバリン)、タリージェ(ミロガバリン)
また、神経障害性疼痛では抗うつ薬もよく処方されます。
抗うつ薬は脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンおよびセロトニンを増加させることにより、下行性疼痛抑制系を賦活化する作用があるからです。
メモ
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
商品名:サインバルタ(デュロキセチン )
三環系抗うつ薬:TCA
商品名:トリプタノール(アミトリプチリン)、ノリトレン(ノルトリプチリン)、トフラニール(イミプラミン)
その他の痛みに対する薬の種類
上記の薬以外にも
- オピオイド系鎮痛薬
- 血管拡張薬
- 筋緊張弛緩薬
- 抗不整脈薬
- ステロイド
- 麻酔薬
などが痛みに対して処方されます。
痛みに対する薬の種類の多さからもわかるように、痛みは多種多様でさまざまな原因があります。
私たちセラピストができることは、しっかり痛みを評価して私たちが手における病態なのか判断することです。
その判断の一つのヒントとなるのが、患者さんの服用している薬の種類です。
例えば、リリカを処方されていれば
(神経障害性の痛みがありそうだな…)
といった感じです。
また、薬について知識を深めていると、患者さんからの信頼も得やすいです。
まとめ
どんな資格であれ、痛みを訴える方に関わるセラピストであれば「トラムセット」「リリカ」「サインバルタ」などと痛みに対する薬を聞いたことがあると思います。しかし、正直それぞれの薬の違いを説明できる方は少ないのでしょうか。
恥ずかしながら私も整形外科に務めるまでは全く知りませんでした。
今回この記事で痛みの種類と薬について知識を深めて頂き、少しでも若手セラピストの役に立てれば幸いです。